#香椎台 木もれ日日記

香椎宮の森の木陰で、広い空をながめながら日々の思いを綴ります

子牛はどこに…?

窓辺に外の淡い光を浴びて、一対の牛の置物が飾られている。親子だろう。そばには花瓶に、おそらくマユミと思われる赤い実をつけた枝が活けてある。静かにたたずむそれらを見ていると、ふと”牛に引かれて善光寺”というフレーズが頭に浮かぶ。

日本最古といわれる阿弥陀如来像はインド、中国、百済を経てはるばると信州のこの寺にやってきた。かつては宗派に偏らず、そのせいか多くの市井の人々の信仰の対象となってきた。(今日では天台宗、浄土宗によって護持運営されているとのこと)。そのむかし縁者となるべき地元の方々に案内され、そのご利益にあずかったことがあった。引きも切らない参拝客の数々に驚いた記憶がある。

おなじみのカフェ『ほのか』でくつろいだ翌日、なにげなく新聞をめくっていたら衝撃的な記事があった。絵本の紹介なのだが、子牛が母を訪ねる物語「もうじきたべられるぼく」というので、紹介には「もうすぐ人間に食べられる子牛が、最後に母親に会いに行ったものの、幸せそうなお母さんを悲しませたくないと、声をかけずに去っていく、という話」だとのこと。

立ち去ろうとする子牛を見つけたお母さんが、子牛を追いかけようとする場面もあるとのことだが、そのあまりに不条理で切ない話に、驚かされた。動画アプリで10年間、300万人余りが見て、このたび、絵本化されたとのこと。作者の、はせがわゆうじさんは”命の大切さ”を感じてほしいのだという。

子どもの自死というニュースがあいつぐこの日本。他国ではありえない話であり、牛の世界だけでなく、人間社会の不条理でもある。子どもの存在、命が消費されていく社会。子どもを含む弱者が大切にされる社会こそ普通の国でありたい。

阿弥陀如来の極楽浄土は西方にあり。

辺境の沖縄、南西諸島には基地や武器が次々と据えられ、抗う人々が排除されていってる。同じ日本でありながら、戦場化されていきかねない状況に、異を唱えない本土の人々といわれてもしかたがない。外国の軍隊に引きずられ戦争に行きついたら、沖縄も本土もなく日本全土の問題であるはずなのだが…。同じように弱者の地であり、強い志を継いでいる人々が暮らす沖縄に思いをはせた。平和な神々、浄土が生き続ける島であってほしい。